障害者雇用について調べると、まず出てくるのは「法定雇用率」という数字です。けれど、現場で起きていることは、数字だけでは見えてきません。企業の採用担当の方と、福祉事業所の支援員の両方の目線から、いまの状況を整理します。

数字で見る障害者雇用

民間企業の法定雇用率は、2024年4月に2.5%へ引き上げられ、2026年7月からは2.7%になりました。対象となるのは、従業員が37.5人以上の企業です。

厚生労働省の「令和6年 障害者雇用状況の集計結果」(2024年6月1日現在)によると、民間企業で雇用されている障害のある方は約67万7,000人で、21年続けて過去最高を更新しています。実雇用率は2.41%。一方で、法定雇用率を達成している企業の割合は46.0%にとどまっています。

つまり、「雇用は増えているのに、半数以上の企業が基準に届いていない」というのが、いまの姿です。

「未達」の企業の多くは、あと1人

達成していない企業の話を聞くと、何十人も足りないという会社は多くありません。多いのは「あと0.5人分」「あと1人」「多くても2人」です。

ハローワークに求人を出し、紹介会社にも頼み、それでも決まらない。理由を聞くと、「どんな仕事を任せればいいか分からない」「配慮と言われても、何をすればいいのか」「面接で話が続かなかった」という言葉が返ってきます。人がいないのではなく、お互いの情報が足りないのです。

福祉事業所の側から見える景色

就労継続支援B型の事業所には、毎日通って作業を続けている方が大勢います。厚生労働省の集計では、B型事業所の平均工賃は月額およそ2万3,000円(令和5年度)です。一般就労に進めば、収入も生活の幅も大きく変わります。

支援員は、その方が何を得意とし、どんな場面でつまずき、どう伝えると伝わるのかを、日々の作業の隣で知っています。ただ、その情報は事業所の中にとどまりがちで、企業に届く形になっていませんでした。

採用のあとに待っている、定着という壁

就職できても、続かなければ意味がありません。障害者職業総合センターの調査(2017年)では、就職から1年後の定着率は、精神障害のある方で約5割、身体障害のある方で約6割、知的障害・発達障害のある方で約7割でした。

続かない理由の多くは、能力ではなく「配慮のすれ違い」です。最初に決めた配慮が現場に伝わっていなかった、体調の変化に周りが気づけなかった、相談できる相手が職場にいなかった。どれも、採用の前後に間に立つ人がいれば防げたことです。

私たちが考えていること

推しONE+ は、この「情報が足りない」と「間に立つ人がいない」の2つを埋めるために作りました。日々の作業を見てきた支援員が「推し」の方を推薦し、面談に同席し、採用のあとも6ヶ月、月1回を目安に職場を訪ねます。

法定雇用率は、企業にとっては義務です。けれど現場で起きているのは、「あと1人」を探す企業と、「この人なら」と思う支援員が、出会えていないだけのことなのかもしれません。